化学研磨とは
電気を使わず化学研磨薬品に浸漬することにより金属表面を溶かして研磨する処理です。
電解研磨と同様に表面は溶解されることでクリーンな状態となり、平滑化され光沢が出ます。
化学研磨の機構
化学研磨は酸洗などの単なる金属溶解と異なり、活性態と不導態の中間領域に位置していると考えられ、化学研磨は金属を溶解させる成分と金属表面を酸化させる成分を組合わせたものになっています。
具体的にはステンレス鋼が不導態を維持している強酸中に皮膜を適度に破壊するような物質を加えて行います。研磨面との界面に溶解反応で生じた金属酸化物の拡散層が形成され、金属はこの拡散層を通して液中に塩として拡散溶解していきます。
この拡散層と研磨液の界面がほぼ平坦とすれば凸部を覆っている拡散層は薄く拡散速度が速く、凹部は拡散層が厚い為拡散速度が遅いです。又、凸は溶解反応(アノード反応)、凹部は還元反応(カソード反応)が生じ局部電池を形成しながら凸部が溶解して平滑化するとも言われています。
化学研磨の特徴
1.光沢・平滑
表面の凸部より優先的に研削するため、表面は平滑が得られ、洗浄性の良い光沢のある表面が得られます。
2.微細バリ除去
バリ部は表面から突起した状態にあります。そのため、エッチングレートが他よりも早いため、研削量を制御しながらバリ取りが可能です。エッジなどを残したバリ取りにも有効です。
3.耐食性向上
素材の欠陥を修正し、なおかつ表面の鉄・Niを溶解させていくため、表面のクロムがリッチになり耐食性が向上します。
4.コンタミ削減
表面に付着するゴミを除去することが可能です。
5.不純物除去
表面の不純物を除去可能です。
化学研磨の平滑 表面観察
化学研磨の平滑 表面観察
化学研磨の利点・問題点
化学研磨は小ロットに対応可能
化学研磨は電解研磨のような冶具・電極等の必要がないため、 初期費用を抑えられ小ロットの処理にも適しています。
処理可能な素材
■ステンレス
■ステンレス・オースナイト系304
■ステンレス・オースナイト系316
■ステンレス・オースナイト系400・対応可能だが光沢がでにくい
化学研磨の問題点
処理液の溶解力により光沢化・平滑化を引き起こすので処理が進む(クロム・ニッケル・鉄等の金属分が溶解)につれ処理液の変化に伴い溶解パターンに狂いが生じるため、常に液管理の徹底化が求められます。
化学研磨・電解研磨の分析表
化学研磨・電解研磨の品質
電解研磨は薬品にてステンレスを溶解し光沢はもちろんのこと、微細バリ、コンタミ、イオン残渣などの改善が期待できる為、精密部品、半導体製造装置部品、医療などの分野において利用されています。化学的な研磨の為、μオーダーで膜厚制御が行え、微細部品への処理には非常に有効です。
クリーンルーム完備
併設しているクリーンルーム(実数値クラス1000)内にて超純水(17MΩ)での精密洗浄、更に真空梱包までの一貫処理を行える設備を兼ね備えています。